リトアニア語に関するデータ
リトアニア共和国の公用語で、2004年5月1日からはEUの言語の一つ。
話者数
約400万人。主にリトアニアで使われ、北米、南米、ポーランド、ドイツ、オーストラリア、イギリスでも話されています。
標準語
19世紀末に、アウクシュタイティヤ方言に基づいて作られました。
方言
主な方言は、アウクシュタイティヤ方言とジェマイテイャ方言の二つ。ジェマイテイャ方言はリトアニア人にとっても分かりにくいです。
文字
ラテン文字が使われ、また特別な符号も使われます。符号をもつ文字はą,č,ę,ė,į,š,ų,ū,žです。リトアニア語の綴りと発音はかなり一致しています。
最初の本
現存するリトアニア語で書かれた最古の書物は、1547年に出版されたM.マジウヴィダスの「カテキズマス」(教理問答書)です。現在この書物は、東ヨーロッパで最も古い大学の一つである、ヴィリニュス大学のスムグレーヴィチャス図書室に保管・展示されています。
歴史
リトアニア語はインド・ヨーロッパ語族のバルト語派に属しています。7世紀から独立言語として存在していたと考えられています。リトアニア語以外にバルト語派の中で現存するのはラトヴィア語です。言語に興味のある人は、リトアニア語はインド・ヨーロッパ語族の最も古い言語の一つで、インドのサンスクリットに近いと聞いたことがあるかもしれません。言い換えれば、リトアニア語は現在使われているインド・ヨーロッパ言語の中で、昔からの変化が一番少なく、最も古い特徴を残した言語なのです。従って、比較言語学上非常に重要な言語で、世界の有名な言語学者に研究され、世界の数々の大学で教えられています。
文法
リトアニア語の文法は難しく、学習者はかなりの忍耐を求められます。名詞は単数と複数もあり、それぞれに7つの格があります。名詞は5種類で、それ ぞれ格の語尾が違います。動詞も難しく、単数と複数があり、人称が3つで、時称の規則も複雑です。時称は、4つの管易時称がある上に、13種類の分詞から 作られる複合時称があります。例えば:
1. 現在時称:dirba「働く」、 yra dirbęs「働いたことがある」、 yra dirbamas「働かれる」、 yra dirbtas「働かれたことがある」
2. 過去時称: dirbo 「働いた」、buvo dirbęs「働いたことがある」、 buvo bedirbąs「働くことがあった」、 buvo dirbamas「働かれた」、 buvo dirbtas「働かれたことがあった」
3. 過去回想時称:dirbdavo 「働いたものだ」、būdavo dirbęs「働いたことがあった」、 būdavo bedirbąs「働くところであった」、 būdavo dirbamas「働かれたものだった」、 būdavo dirbtas 「働かれたものだった」
4.将来時称:dirbs、bus dirbęs、bus bedirbąs、bus dirbamas、bus dirbtas (全て「働くつもりである」と訳されます)。
また、形容詞及び副詞は3-5種類の級があり、形容詞は3種類の性(女性、男性、中性)があり、特別な代名詞的形容詞も存在します。
リトアニア語は愛称形・指小形があります。例えば、mama「母」という言葉は、40種類もの愛称形・指小形があります。Mamytė, mamutė, mamulė, mamelė, mamulytė, mamukas, mamučiukas, mamužė, mamužytėなどです。
リトアニア語では、女性の苗字で未婚か即婚かが分かります。 -aitė, -ytė, -(i)ūtė という語尾は未婚女性に使われ、 -ienė という語尾は既婚女性に使われます。例えば、田中という日本人男性がリトアニア人女性と結婚すると、妻の苗字は「タナキエネ」となり、また娘の名字は「タナカイテ」とな り、息子は父と同じ「タナカ」という苗字を持つことになります。
アクセント
リトアニア標準語には前強調語勢と後強調語勢の2種類の語勢があります。時々、語勢だけで言葉の意味が異なる場合があります。例えば、後強調語勢aûkštas「階」、前強調語勢áukštas「高い」などです。
アクセントの位置は変化しやすく、語尾にあることもあれば、語根にあることもあります。このようなアクセントの変化は、リトアニア語の古さを示して います。アクセントの変化は、リトアニア語を勉強する外国人にとって困難なものだと言えます。リトアニア語の日本人(男性)という言葉の格変化とアクセント変化は次のようになります。
単数
主格japònas
属格japòno
与格japònui
対格japonè
具格japòną
所格japonù
呼格japòne
複数
主格japònai
属格japònų
与格japònams
対格japonùs
具格japònais
所格japònuose
呼格japònai
語彙
リトアニア語は、文法と同様に、語尾もとても古いです。再現されたインド・ヨーロッパ語、サンスクリット語(略:Skr.)とリトアニア語(略:Lit.)を比較してみましょう
Skr. loukos「明るい所」と lit. laukas「畑」
Skr. p(h)enk(h)e「五」とlit. penki 「五」
Skr. agnis「火」と lit. ugnis「火」
Skr. devas「神」と lit. dievas 「神」
Skr. sūnus 「息子」とlit. sūnus 「息子」
リトアニア語の語彙は、百年わたって編集・出版されたリトアニア語大辞典に集められています。最後の20巻目は2002年に出版されました。
リトアニア語の動詞eiti「行く」には、100語以上の類語があります。
日本から由来した語彙:bonsas「盆栽」、 bušido「武士道」、 charakiris「腹切り」、 haiku「俳句」、 geiša「芸者」、 karaokė「カラオケ」、 karatė「空手」、 kimono「着物」、 sakė「酒」、 sakura「桜」、 suši「寿司」など。
言語政策
リトアニア語は、現在リトアニア国民の大多数にとって母語となっています。1864-1904年のロシア帝国によるラテン文字の禁止、ソ連支配時代に行われたロシア化政策を乗り越えてきました。リトアニア語は長きに渡り行政・政治等の公式的な用途からは排除されていましたが、現在に至るまで話され続けています。また、リトアニアに住んでいる少数民族も自分の母語以外にリトアニア語を学習しています。
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